定期健康診断は1年以内ごとに1回、費用は事業者負担|省略できる項目と50人の壁

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結論:1年以内ごとに1回。費用は事業者が負担します

健康診断は「やったほうがいいもの」ではありません。労働安全衛生法第66条に基づく事業者の義務です。

事業者は、労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければなりません。また、労働者は、事業者が行う健康診断を受けなければなりません。

労働者側にも受診義務がある、という書き方になっています。

1. 一般健康診断は5種類あります

種類 対象 実施時期
雇入時の健康診断(安衛則第43条) 常時使用する労働者 雇入れの際
定期健康診断(安衛則第44条) 常時使用する労働者(特定業務従事者を除く) 1年以内ごとに1回
特定業務従事者の健康診断(安衛則第45条) 安衛則第13条第1項第2号に掲げる業務に常時従事する労働者 配置替えの際、6月以内ごとに1回
海外派遣労働者の健康診断(安衛則第45条の2) 海外に6か月以上派遣する労働者 派遣する際、帰国後国内業務に就かせる際
給食従業員の検便(安衛則第47条) 事業に附属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者 雇入れの際、配置替えの際

2. 「6月以内ごとに1回」になる業務に注意

特定業務従事者は年2回です。該当する業務のうち、一般的な職場でも起こりうるものを挙げます。

記号 業務
イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
ヌ 深夜業を含む業務
ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務

このほか、有害放射線、粉じん、異常気圧、振動、強烈な騒音、坑内、有害物の取扱い等が並んでいます。

「ヌ 深夜業を含む業務」は見落とされやすいところです。深夜営業の飲食店やコンビニ、夜勤のある施設などが該当し得ます。

3. 定期健康診断の項目(11項目)

# 項目 省略可
1 既往歴及び業務歴の調査 ―
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査 ―
3 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査 身長・腹囲は○
4 胸部エックス線検査及び喀痰検査 ○
5 血圧の測定 ―
6 貧血検査(血色素量及び赤血球数) ○
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP) ○
8 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド) ○
9 血糖検査 ○
10 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査) ―
11 心電図検査 ○

雇入れ時の健康診断も同じ11項目ですが、喀痰検査がなく、省略の仕組みもありません。

4. 省略できるのは「医師が必要でないと認めるとき」だけです

年齢で機械的に決まるものではありません。ここは明確に書かれています。

「医師が必要でないと認める」とは、自覚症状及び他覚症状、既往歴等を勘案し、医師が総合的に判断することをいいます。したがって、以下の省略基準については、年齢等により機械的に決定されるものではないことに留意して下さい。

そのうえで、基準は次のとおりです。

項目 省略できる者
身長 20歳以上の者
腹囲 ①40歳未満(35歳を除く)の者 ②妊娠中の女性その他、腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断された者 ③BMIが20未満である者 ④BMIが22未満であって、自ら腹囲を測定し、その値を申告した者
胸部エックス線検査 40歳未満のうち、①5歳毎の節目年齢(20歳、25歳、30歳、35歳) ②感染症法で結核に係る定期の健康診断の対象とされている施設等で働いている者 ③じん肺法で3年に1回のじん肺健康診断の対象とされている者 のいずれにも該当しない者
喀痰検査 ①胸部エックス線検査を省略された者 ②胸部エックス線検査によって病変の発見されない者、または結核発病のおそれがないと診断された者
貧血・肝機能・血中脂質・血糖・心電図 35歳未満の者及び36〜39歳の者

最後の行が特徴的です。35歳はやる、36〜39歳は省略できる、40歳からはやるという構造になっています。

5. 実施したあとに6つやることがあります

# やること 根拠
1 健康診断個人票を作成し、定められた期間保存 安衛法第66条の3
2 異常の所見がある労働者について、必要な措置を医師から意見聴取 安衛法第66条の4
3 意見を勘案し必要と認めるときは、作業の転換、労働時間の短縮等の措置 安衛法第66条の5
4 結果を労働者に通知 安衛法第66条の6
5 特に健康の保持に努める必要がある労働者に保健指導(努力義務) 安衛法第66条の7
6 所轄労働基準監督署長へ結果を報告 安衛法第100条

6の報告義務には人数の線があります。

安衛則44条、45条、48条の健診結果報告書については、常時50人以上の労働者を使用する事業者、特殊健診の結果報告書については、健診を行った全ての事業者。

一般健康診断の結果報告は50人以上から、特殊健康診断の報告は人数を問わず、という違いです。

6. 費用は誰が払うのか

健康診断の実施は法律上の事業者の義務です。したがって費用は事業者が負担するのが原則です。受診に要する時間の賃金の扱いについては、本記事では扱っていません。

7. 特殊健康診断と歯科医師による健診

有害な業務に常時従事する労働者等には、原則として雇入れ時、配置替えの際及び6月以内ごとに1回(じん肺健診は管理区分に応じて1〜3年以内ごとに1回)、特別の健康診断が必要です。有機溶剤、鉛、特定化学物質、高圧室内・潜水、放射線、除染等、石綿などが挙げられています。

また、歯科医師による健康診断もあります。

塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者(安衛則第48条)

なお、VDT作業、騒音作業、重量物取扱い業務、身体に著しい振動を与える業務等については、それぞれ特定の項目について健康診断を実施するよう指針・通達等が出ています。腰痛については腰痛予防対策指針の記事にまとめています。

8. 実務としてやること

  1. 常時使用する労働者を洗い出す(パート・アルバイトを含めて確認する)
  2. 深夜業を含む業務の人がいないか確認する(該当すれば年2回)
  3. 雇入れ時にも健診が必要であることを採用フローに入れる
  4. 結果は個人票にして保存する
  5. 異常の所見がある人は医師の意見を聴く
  6. 結果を本人に通知する
  7. 常時50人以上なら労働基準監督署に報告する

当サイトでは個別の該当判断をしません。最寄りの都道府県労働局・労働基準監督署にご確認ください。

FAQ

定期健康診断はどのくらいの頻度ですか。

1年以内ごとに1回です。特定業務従事者は6月以内ごとに1回になります。

深夜業があると年2回ですか。

安衛則第13条第1項第2号の「ヌ 深夜業を含む業務」に常時従事する労働者は、特定業務従事者の健康診断(6月以内ごとに1回)の対象です。該当するかどうかは実態で判断されます。

35歳未満なら血液検査は省略できますか。

基準としては35歳未満の者及び36〜39歳の者が挙げられていますが、「年齢等により機械的に決定されるものではない」とされており、医師が総合的に判断します。

健診結果は監督署に出す必要がありますか。

一般健康診断(安衛則44条等)の結果報告書は常時50人以上の労働者を使用する事業者が対象です。特殊健康診断は健診を行った全ての事業者が報告します。

費用は誰が負担しますか。

健康診断の実施は法律上の事業者の義務であるため、費用は事業者が負担するのが原則です。

労働者は受診を断れますか。

リーフレットには「労働者は、事業者が行う健康診断を受けなければなりません」と記載されています。

参照した一次情報

  • 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」 mhlw.go.jp(PDF)
    2026年9月21日確認。健康診断の種類と対象・実施時期、特定業務(安衛則第13条第1項第2号)の一覧、一般健康診断の項目(雇入れ時・定期)、省略基準とその留意事項、実施後の6つの取組事項と根拠条文、報告義務の人数要件、特殊健康診断・じん肺健診・歯科医師による健診、VDT作業等に関する指針・通達に関する記述はこのリーフレットに基づきます。健康診断個人票の保存期間の個別の年数、受診時間の賃金の取扱い、および各特殊健診の具体的な項目は、本記事では扱っていません。

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