WBGT28度か気温31度で1時間以上なら対象です|職場の熱中症対策の義務化

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結論:WBGT28度か気温31度の場所で1時間以上なら、対象の作業です

令和7年6月1日から、改正労働安全衛生規則(安衛則第612条の2)が施行され、職場の熱中症対策が事業者の義務になりました。

まず、自社が対象かどうかの線引きです。通達の定義です。

「暑熱な場所」とは、湿球黒球温度(WBGT)が28度以上又は気温が31度以上の場所をいい(中略)
「暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業」とは、上記の場所において、継続して1時間以上又は1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれる作業をいうこと。

「屋外の建設現場だけ」ではありません。通達は、出張先で作業を行う場合、労働者が移動して複数の場所で作業を行う場合や、作業場所から作業場所への移動時等も含むとしています。非定常作業、臨時の作業等も、条件を満たせば対象です。

1. 義務づけられたのは2つだけです

新設されたのは2つの義務です。どちらも「あらかじめ定めて、周知する」という形です。

# 義務 中身
1 報告体制の整備と周知 作業に従事する者が熱中症の自覚症状を有する場合、または他の者に熱中症が生じた疑いがあることを発見した場合に、その旨を報告させる体制を整備し、周知する
2 実施手順の作成と周知 作業からの離脱、身体冷却、必要に応じての医師の診察又は処置その他悪化防止に必要な措置の内容と実施手順を作業場ごとに定め、周知する

測定機器を買え、休憩室を作れ、という義務ではありません。「気づいた人が誰に言うか」と「言われたら何をするか」を、紙にして配れという義務です。

2. 背景にある数字

令和6年における休業4日以上の死傷災害は、1,195人と調査開始以来最多となっている。特に、死亡災害については、3年連続で30人以上となっており、労働災害による死亡者数全体の約4%を占める状況にある

そして、義務の内容が「体制と手順」である理由も書かれています。

熱中症による死亡災害の原因の多くは、初期症状の放置、対応の遅れによることから

3. 対象になるのは「労働者」だけではありません

「当該作業に従事する者」(以下「作業者」という。)とは、労働者だけでなく、労働者と同一の場所において当該作業に従事する労働者以外の者を含むものであること。

一人親方、フリーランス、家族従業者などが同じ場所で作業していれば、その人たちも含めて考えることになります。

複数の会社が入る現場についても明記があります。

建設現場にみられるような混在作業であって、同一の作業場で複数の事業者が作業を行う場合は、当該作業場に関わる元方事業者及び関係請負人の事業者のいずれにも措置義務が生ずるものであること。(中略)措置が行われていなかった場合には、元方事業者のみに違反が生ずる訳ではなく、当該作業場に関わる全ての事業者に同条違反が生ずるものであること。

「元請がやっているはず」は通りません。ただし、周知の方法として各事業者が共同して1つの緊急連絡先を定め、見やすい場所に掲示することが例示されています。

4. 暑さの判断は実測が原則、ただし例外あり

暑熱な場所に該当するか否かは、原則として作業が行われる場所で湿球黒球温度又は気温を実測することにより判断する必要があるが、例えば、通風のよい屋外作業について、天気予報(スマートフォン等のアプリケーションによるものを含む。)、環境省の運営する熱中症予防情報サイト等の活用によって判断可能な場合には、これらを用いても差し支えないこと。

屋内や、風の通らない場所は実測が原則です。屋外でも「通風のよい」という条件が付いています。

また、対象に当たらない場合についても一文あります。

熱中症を生ずるおそれのある作業に該当しない場合であっても、作業強度や着衣の状況によっては、熱中症のリスクが高まることから、事業者は、改正省令に準じた対応を行うよう努めること。

5. 「報告させる体制」の具体例

通達は、最低限の内容と、推奨される方法を分けて書いています。

区分 内容
最低限含まれるもの 報告を受ける者(作業場の責任者等)の連絡先と連絡方法を定め、明示し、作業中は随時報告を受けられる状態を保つ
推奨される方法 ・責任者等による作業場所の巡視
・2人以上の作業者が互いの健康状態を確認するバディ制
・ウェアラブルデバイスを用いたリスク管理
・責任者・労働者双方向での定期連絡
・これらの組合せ

ウェアラブル機器には条件が付いています。

必ずしも当該機器を着用した者の状態を正確に把握することができるわけではないため、他の方法と組み合わせる等により、リスク管理の精度を高めることが望ましい。

6. 「身体の冷却」として挙げられているもの

作業着を脱がせて水をかけること、アイスバスに入れること、十分に涼しい休憩所に避難させること、ミストファンを当てること等の被災者を体外から冷却する措置のほか、アイススラリー(流動性の氷状飲料)を摂取させる等の被災者を体内から冷却する措置

そして、この一文が重要です。

この間、容態が急変する場合があることから、熱中症を生じたおそれがある作業者を一人きりにすることなく、他の作業者等が見守ることが重要であること。

「涼しいところで休ませる」だけで、その場を離れてはいけない、ということです。

7. いつまでに、どうやって周知するか

項目 内容
時期 作業が行われることが想定される作業日の作業開始前まで。夏季の屋外作業のように一定期間続くことが明らかな場合は十分な余裕をもって
繰り返し 同一の従事者で連続して行われ、既に体制整備と周知が済んでいれば作業日ごとに重ねて実施する必要はない
方法 見やすい箇所への掲示、メールの送付、文書の配布、朝礼での口頭など。原則いずれでも可
注意 内容が複雑な場合や朝礼に参加しない者がいる場合など、口頭だけでは確実に伝わらないことがあるため、複数の手段を組み合わせる
記録 周知した結果の記録の保存までは法令では求めていない。ただし労働基準監督署による確認に際しては、事業者として適切に対応することが求められる

記録の義務はありませんが、監督署に聞かれたときに説明できる状態にしておく、という整理です。

また、周知の対象について、こういう記述もあります。

作業者の不調を発見するのは熱中症を生ずるおそれのある作業以外の作業に従事する者であることも想定されるため、(中略)広く緊急連絡先等を周知することが望ましい

8. 実務としてやること

  1. 自社の作業がWBGT28度/気温31度で1時間以上または1日4時間超に当たるかを確認する
  2. 誰に報告するかを決め、連絡先と連絡方法を紙にする
  3. 報告を受けたら何をするかの手順を作る(離脱・冷却・受診・緊急連絡網・搬送先)
  4. 緊急搬送先の連絡先と所在地を事前に調べておく
  5. 掲示+口頭など複数の手段で周知する
  6. 複数の会社が入る現場では共同で1つの緊急連絡先を定めて掲示する
  7. 一人で作業させない、倒れた人を一人にしない

当サイトでは個別の作業が対象に当たるかどうかを判断しません。通達本文(基発0520第6号)と、所轄の労働基準監督署にご確認ください。

FAQ

いつから義務になりましたか。

改正省令は令和7年4月15日に公布され、令和7年6月1日から施行されています。

屋内の作業も対象ですか。

対象になり得ます。「暑熱な場所」はWBGT28度以上または気温31度以上の場所で、屋内外を問いません。判断は原則として実測によります。

短時間の作業でも対象ですか。

対象は継続して1時間以上、または1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれる作業です。これに当たらない場合でも、作業強度や着衣によってはリスクが高まるため改正省令に準じた対応に努めることとされています。

WBGT計を買う義務はありますか。

通達に機器の購入義務は書かれていません。判断は原則として実測ですが、通風のよい屋外作業については天気予報や環境省の熱中症予防情報サイト等で判断可能な場合はそれでも差し支えないとされています。

周知したことを記録に残す必要はありますか。

記録の保存までは法令では求めていません。ただし労働基準監督署による確認に際しては、事業者として適切に対応することが求められるとされています。

下請けに任せていれば大丈夫ですか。

いいえ。混在作業では元方事業者と関係請負人のいずれにも措置義務が生じ、措置が行われていなかった場合は当該作業場に関わる全ての事業者に違反が生ずるとされています。

参照した一次情報

  • 厚生労働省労働基準局長「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」(基発0520第6号、令和7年5月20日) mhlw.go.jp(PDF)
    2026年9月20日確認。公布日・施行日、改正の趣旨と災害統計(令和6年 休業4日以上1,195人、死亡3年連続30人以上、全体の約4%)、暑熱な場所の定義(WBGT28度/気温31度)と作業時間の要件、作業者の範囲、混在作業における措置義務、暑さの判断方法、報告体制の内容と推奨される方法、身体の冷却の例、周知の時期・方法・記録に関する記述はこの通達に基づきます。通達の別添1(掲示例)・別添2(手順例)の具体的な様式、および罰則の適用については本記事では確認していません。

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