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結論:人力で持つ重さは、体重のおおむね40%以下です
厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」に、具体的な数字が1つだけ出てきます。
満18歳以上の男子労働者が人力のみにより取り扱う物の重量は、体重のおおむね40%以下となるように努めること。満18歳以上の女子労働者では、さらに男性が取り扱うことのできる重量の60%位までとすること。
体重60kgの男性なら24kgまで、同じ体重の女性ならその60%=約14kgまでという計算になります。
そして、それを超える場合の扱いも書かれています。
上記の重量を超える重量物を取り扱わせる場合、適切な姿勢にて身長差の少ない労働者2人以上にて行わせるように努めること。この場合、各々の労働者に重量が均一にかかるようにすること。
ただし、指針は重量だけを見ることを戒めています。
事業者は、単に重量制限のみを厳守させるのではなく、取扱い回数等の作業密度を考慮し、適切な作業時間、人員配置等に留意しつつ、次の対策を講ずること。
1. 腰痛の原因は4種類に整理されています
| 要因 | 中身 |
|---|---|
| 動作要因 | 腰部に動的あるいは静的に過度の負担を加える動作 |
| 環境要因 | 腰部への振動、温度、転倒の原因となる床・階段の状態等 |
| 個人的要因 | 年齢、性、体格、筋力、椎間板ヘルニア、骨粗しょう症等の既往症又は基礎疾患の有無等 |
| 心理・社会的要因 | 職場の対人ストレス等 |
「重いものを持ったから」だけではありません。寒さと職場の人間関係が、指針の中で腰痛の要因として並んでいるのは覚えておく価値があります。
指針は、腰痛が発生しやすい作業として5つを挙げ、それぞれに別紙で対策を示しています。
- 重量物取扱い作業
- 立ち作業
- 座り作業
- 福祉・医療分野等における介護・看護作業
- 車両運転等の作業
2. 数字で書かれている作業姿勢
指針の中で、もうひとつ具体的な数字が出てくるところです。
作業台や椅子は適切な高さに調節すること。具体的には、立位、椅座位に関わらず、作業台の高さは肘の曲げ角度がおよそ90度になる高さとすること。また、椅子座面の高さは、足裏全体が着く高さとすること。
同じ姿勢を続けないことについても、具体策があります。
長時間の立位作業では、片足を乗せておくことのできる足台や立位のまま腰部を乗せておくことのできる座面の高い椅子等を利用し、長時間の座位作業では、適宜、立位姿勢を取るように心がける。
美容室やサロンの立ち仕事にそのまま当てはまります。
3. 姿勢の作り方(原文どおり)
- 前屈、中腰、ひねり、後屈ねん転等の不自然な姿勢を取らない。前屈や中腰は膝を着いた姿勢に置き換え、ひねりや後屈は体ごと向きを変え、正面を向いて作業する
- 作業時は、作業対象にできるだけ身体を近づける
- 不自然な姿勢を取らざるを得ない場合は、程度をできるだけ小さくし、頻度と時間を減らす。台に寄りかかり、壁に手を着き、床に膝を着く等で身体を支える
- 持ち上げる、引く、押す等の動作では、膝を軽く曲げ、呼吸を整え、下腹部に力を入れながら行う
- 大きな物や重い物を持っての移動距離は短くし、人力での階段昇降は避ける
重量物を床から持ち上げるときは、
片足を少し前に出し、膝を曲げ、腰を十分に降ろして(中略)できるだけ身体を対象物に近づけ、重心を低くするような姿勢を取ること。
また、はい付け又ははいくずし作業においては、できるだけ、はいを肩より上で取り扱わないこととされています。
4. 腰部保護ベルトは「一律に使用しない」
ここは誤解されやすい項目です。
腰部保護ベルトは、個人により効果が異なるため、一律に使用するのではなく、個人毎に効果を確認してから使用の適否を判断すること。
「全員に配って着けさせる」は、指針の考え方とは違います。
靴と服装についても記載があります。
- 作業時の靴は足に適合したもの。腰部に著しい負担のかかる作業ではハイヒールやサンダルを使用しない
- 作業服は伸縮性、保温性、吸湿性のあるもの
5. 環境の側でできること
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 温度 | 寒冷ばく露は腰痛を悪化させ、又は発生させやすくするので、屋内は適切な温度に保つ。冬季の屋外では保温のための衣服や暖房設備に配慮 |
| 照明 | 作業場所、通路、階段等で足もとや周囲の安全が確認できる照度 |
| 作業床面 | できるだけ凹凸がなく、防滑性、弾力性、耐衝撃性及び耐へこみ性に優れたもの |
| 作業空間 | 雑然とした作業空間、狭い作業空間は腰痛の発生や症状の悪化につながりやすい |
| 振動 | 車両運転等で腰部と全身に長時間振動を受ける場合、座席等について振動ばく露の軽減対策 |
6. 腰痛の健康診断は「6月以内ごとに1回」
重量物取扱い作業、介護・看護作業等腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者には、配置する際とその後6月以内ごとに1回、医師による腰痛の健康診断を行うこととされています。
| 区分 | 項目 |
|---|---|
| 配置前 | ①既往歴(腰痛に関する病歴及びその経過)及び業務歴の調査 ②自覚症状(腰痛、下肢痛、下肢筋力減退、知覚障害等)の有無 ③脊柱の検査 ④神経学的検査 ⑤脊柱機能検査(クラウス・ウェーバーテスト又はその変法) |
| 定期 | ①既往歴及び業務歴の調査 ②自覚症状の有無 ※結果により医師が必要と認める者には、脊柱の検査・神経学的検査を追加 |
事後措置として、医師から意見を聴き、必要があれば作業の実施体制、作業方法等の改善、作業時間の短縮等の措置を講じます。さらに、
睡眠改善や保温対策、運動習慣の獲得、禁煙、健康的なストレスコントロール等の日常生活における腰痛予防に効果的な内容を助言することも重要である。
睡眠については睡眠5原則の記事、運動については身体活動ガイドの記事にまとめています。
7. 作業体制と休憩
- 腰部に過度の負担のかかる作業では、無理に1人で作業するのではなく、複数人で作業できるようにする
- 人員配置は、個人の健康状態(腰痛の有無を含む)、特性(年齢、性別、体格、体力等)、技能・経験を考慮する
- 適宜休憩時間を設け、その時間には姿勢を変える。作業時間中にも小休止・休息が取れるようにする
- 横になって安静を保てるよう十分な広さを有し、適切な温度に調節できる休憩設備を設けるよう努める
- 不自然な姿勢や反復作業は他の作業と組み合わせて連続しないようにする
- 夜勤・交代勤務・不規則勤務では作業量が昼間を下回るよう配慮し、適宜休憩や仮眠を取れるようにする
- 過労を引き起こすような長時間勤務は避ける
8. 復帰させるときの注意
腰痛は再発する可能性が高いため、休業者等が職場に復帰する際には、事業者は、産業医等の意見を十分に尊重し、腰痛の発生に関与する重量物取扱い等の作業方法、作業時間等について就労上必要な措置を講じ、休業者等が復帰時に抱く不安を十分に解消すること。
9. 実務としてやること
- 人力で持つ重さの上限を決める(男性は体重の約40%、女性はその60%)
- 超えるものは台車等を使うか、身長差の少ない2人以上で
- 作業台の高さを肘90度に合わせる
- 立ち仕事には足台か座面の高い椅子を置く
- 冬場の寒さを放置しない
- 腰部保護ベルトは一律配布ではなく、個人ごとに効果を確認する
- 該当する作業があるなら6月以内ごとの腰痛健診
- 復帰時は作業方法と作業時間を調整する
当サイトでは個別の作業や症状について判断しません。指針本文をご確認のうえ、症状がある場合は医療機関を受診してください。
FAQ
何kgまで持ってよいのですか。
満18歳以上の男子労働者は体重のおおむね40%以下、満18歳以上の女子労働者は男性が取り扱うことのできる重量の60%位までとされています。ただし指針は重量制限だけを守らせるのではなく、取扱い回数等の作業密度も考慮するとしています。
作業台の高さはどう決めますか。
肘の曲げ角度がおよそ90度になる高さです。椅子の座面は足裏全体が着く高さとされています。
腰痛ベルトは配ったほうがよいですか。
指針は「個人により効果が異なるため、一律に使用するのではなく、個人毎に効果を確認してから使用の適否を判断すること」としています。
立ち仕事でも対象ですか。
指針は立ち作業と座り作業をそれぞれ別紙で扱っています。長時間の立位作業には足台や座面の高い椅子の利用が示されています。
腰痛の健康診断は必要ですか。
重量物取扱い作業、介護・看護作業等腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者について、配置する際およびその後6月以内ごとに1回実施することとされています。
寒さは関係ありますか。
指針は「寒冷ばく露は腰痛を悪化させ、又は発生させやすくする」として、屋内の温度を適切に保つこと、冬季の屋外では保温や暖房設備に配慮することを求めています。
参照した一次情報
- 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(平成6年9月6日付け厚生労働省労働基準局長通達別添) mhlw.go.jp(PDF)
2026年9月21日確認。腰痛の発生要因4区分、対象となる5つの作業、作業姿勢・動作の留意事項、作業台と椅子の高さ、立位・座位の同一姿勢への対策、腰部保護ベルト・靴・作業服、作業環境管理(温度・照明・床面・作業空間・振動)、作業の実施体制と休憩、腰痛の健康診断の項目と頻度、事後措置と助言、職場復帰時の措置、重量物取扱い作業における重量の目安(体重の40%・女性はその60%)と2人以上での取扱いに関する記述はこの指針に基づきます。介護・看護作業、車両運転等の作業に関する別紙の詳細、およびリスクアセスメントの具体的手順は本記事では扱っていません。
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この記事は当サイト運営者が執筆しました。医師・産業医による記事ではありません。上記の確認日以降に指針が改訂されている可能性があります。腰痛の症状がある場合は医療機関を受診してください。


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