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結論:「終身介護」と書くなら、退去を求める場合があることも書かなければなりません
有料老人ホームのパンフレットや広告には、景品表示法に基づく専用の告示があります。「有料老人ホームに関する不当な表示」(平成16年公正取引委員会告示第3号)です。その運用基準が、何をどう書かなければならないかを具体的に定めています。
いちばん重い項目から見ていきます。告示第六項は、終身にわたって居住し、または介護サービスの提供を受けられるかのような表示を扱っています。
| 該当する表示の例 |
|---|
| 「終身介護」 |
| 「終身利用」 |
| 「入居一時金について追加の費用はいりません。」 |
これらの表示をする場合、次の2つが明りょうに記載されていなければなりません。
- 入居者の状態によっては、当該入居者に対して、当該有料老人ホームからの退去又は提携施設等への住み替えを求める場合があること
- 退去又は住み替えを求めることとなる入居者の状態の具体的な内容
「終身」とだけ書いて、どういう状態になったら出ることになるのかを書かない——これが不当表示になります。
なお運用基準には注記があります。「介護一時金」「健康管理費」等の表示についても、表示された名目で徴収される費用が高額なこと等とあいまって、終身にわたって居住・介護サービスを受けられるかのような表示に該当する場合もあり得る、とされています。
1. 建物の写真だけを載せてはいけない場合
告示第一項は、土地・建物の所有関係についてのものです。
| 不当表示に該当する例 |
|---|
| 有料老人ホームがその土地又は建物を所有していないにもかかわらず、「鉄筋コンクリート造○階建て」とのみ表示している場合 |
| 有料老人ホームがその土地又は建物を所有していないにもかかわらず、建物の外観の写真のみを表示している場合 |
所有していない場合の明りょうな記載の例として、次が挙げられています。
- 「事業主体○○、土地所有者△△、建物所有者□□」
- 「土地・建物の権利形態 賃借(定期借地権 契約期間○年(平成△年契約))」
2. 写真に写っているプールは、そこにあるとは限りません
告示第二項は、入居者の利用に供される施設・設備の表示です。3つの類型があります。
| 類型 | 明りょうな記載の例 |
|---|---|
| そのホームが設置しているものではない施設・設備 | 「写真の温水プールは△△市が設置しているもので、入居者の方も自由に利用できます。」/「写真の特別浴室は医療法人○○が経営する△△センターが設置しているものです。」 |
| そのホームの敷地又は建物内に設置されていない施設・設備 | 距離(「当ホームから○メートルの場所にあります。」)/所要時間(「当ホームから徒歩○分の場所にある△△の施設内にあります。」)/隣接している場合はその旨(「当ホームの敷地に隣接した○○センター内にあります。」) |
| 利用するためには利用するごとに費用を支払う必要がある施設・設備 | 「写真の○○プールを利用するためには、一回当たり○円の費用が必要となります。」/「○○センターを利用するためには、その都度費用が必要となります。」 |
ただし、商業施設、公園、学校、図書館、美術館、博物館、病院、官公署等であって、不特定多数の者の利用に供されることが表示上明らかであるものは、この規制の対象に含まれません。
3. 「機能訓練室」が専用とは限りません
告示第三項は、特定の用途のための専用の施設・設備として設置・使用されていない場合の記載です。例として次が挙げられています。
- 「機能訓練室(教養娯楽室と共用)」
- 「○○室(機能訓練実施時には機能訓練室として使用します。)」
4. 「南向き」「バリアフリー」も表示の対象です
告示第四項は、設備の構造・仕様についての表示です。運用基準は、具体的な設備の名称を記載せずに行う「南向き」「バリアフリー構造」「プライバシー確保」等の表示も含む、としています。
構造・仕様の一部に異なるものがある場合の記載例です。
- 「南向きの部屋 ○部屋中△部屋」
- 「南向き居室○室(△室の居室は東向き)」
- 「居室Aタイプ(○○、△△付き) ○室中△室(居室Bタイプ(□室)には○○、△△が設置されていません。)」
「バリアフリー」と一言書いてあっても、全室がそうとは限らない、ということです。
5. 住み替え先が相部屋かどうか
告示第五項について、運用基準は次のように定めています。入居者が住み替える居室が、例えば二人以上の入居者が入居する介護居室である場合には、「介護居室(○人室)」等、当該居室が二人以上の入居者が入居する居室であることが記載されていなければ、「明りょうに記載されていないもの」として取り扱う、と。
6. 協力医療機関の書き方
告示第七項は、医療機関との協力関係の表示です。明りょうに記載されているとは、次の事項が記載されているものをいいます。
| 記載事項 | 例 |
|---|---|
| 協力関係にあるとする医療機関の名称、および協力の具体的な内容(協力に関する診療科目の具体的な名称を含む) | 「○○病院(内科) 年に○回の健康診断」 |
| 入居者が費用を負担する必要がある場合はその旨(健康保険法等に基づく医療・療養の給付を受ける際の一部負担金を除く) | — |
「○○病院と提携」だけでは足りません。何科で、何をしてくれるのかまで書く必要があります。
7. 介護サービスを自分で提供しない場合
告示第八項について、運用基準は次のような記載を明りょうな記載に含むとしています。
入居者が介護が必要となった場合、外部の事業者による訪問介護等の介護サービスを利用する必要がある旨の記載
ホーム自身が介護サービスを提供するのか、外部の事業者を使うのか——ここは費用にも直結します。
8. 介護保険の対象外の費用
告示第九項は、介護保険法の規定に基づく保険給付の対象とならない介護サービスについての表示です。「介護一時金○円」「月額払介護費△円」等の表示が含まれます。
この場合、内容と費用の記載が求められます。運用基準は、有料老人ホームが個別的な介護サービスを提供してその費用を徴収する場合について、次の2点の記載を求めています。
- 当該個別的な介護サービスの具体的内容
- 当該費用及びその徴収方法
また、人員配置が手厚いとして費用を徴収する場合には、要介護者等の人数に応じた介護職員等の数(例えば「要介護者等二人に対し、週○時間換算で介護職員一人以上」等)や、その費用が合理的な積算根拠に基づいていることの記載も求められます。
なお「健康管理費」等の表示であっても、介護保険給付の対象とならない介護サービスまたはその費用の存在を想起させる表示がなされることによって、この項の表示に該当する場合もあり得る、と注記されています。
実務としてやること
見学・検討するとき
- 「終身」と書かれていたら、退去・住み替えを求められる状態の具体的な内容がどこに書いてあるかを探す
- パンフレットの写真の施設が、敷地内にあるのか、ホームが設置したものか、利用のたびに費用がかかるのかを確認する
- 「南向き」「バリアフリー」は全室なのか、何室中何室なのかを確認する
- 住み替え先の居室が何人部屋かを確認する
- 協力医療機関は、診療科目と協力の内容まで確認する
- 介護サービスを自分で提供するのか、外部事業者を使うのかを確認する
- 「介護一時金」「健康管理費」などの名目の費用は、何に対する費用かを確認する
記録として
- パンフレットと重要事項説明書を保管する
- 口頭で説明された条件は、書面にあるかを確認する
FAQ
「終身」と書いてはいけないのですか
書けないわけではありません。運用基準は、そうした表示をする場合に、退去・住み替えを求める場合があることと、その状態の具体的な内容を明りょうに記載することを求めています。
サービス付き高齢者向け住宅も対象ですか
本記事が扱っているのは「有料老人ホームに関する不当な表示」の運用基準です。他の類型の住宅への適用については、本記事では確認していません。
ウェブサイトの掲載も対象ですか
景品表示法上の表示にはインターネットによる広告も含まれます。個別の判断については消費者庁にご確認ください。
この運用基準はいつのものですか
平成16年6月16日事務総長通達第11号で、平成18年3月3日および平成18年10月12日に変更されています。
表示がおかしいと思ったら
景品表示法違反が疑われる表示については、消費者庁が情報提供の窓口を設けています。契約に関するトラブルは、消費生活センター等にご相談ください。
参照した一次情報
- 公正取引委員会「「有料老人ホームに関する不当な表示」の運用基準」(平成16年6月16日事務総長通達第11号、平成18年10月12日変更) caa.go.jp(PDF)
2026年9月22日確認。土地・建物の所有関係の記載例と不当表示の例、入居者の利用に供される施設・設備の3類型と明りょうな記載の例、不特定多数の利用に供される施設が対象外である旨、専用でない施設・設備の記載例、設備の構造・仕様(「南向き」「バリアフリー構造」等を含む)の記載例、住み替え先の居室が二人以上の場合の記載、終身にわたる居住・介護サービスの表示に該当する例と必要な記載、協力医療機関の記載事項、介護サービスを自ら提供しない場合の記載、介護保険給付の対象とならない介護サービスの内容と費用の記載に関する記述はこの資料に基づきます。
いずれも2026年9月22日に確認しました。
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この記事は、公表されている一次情報をもとに整理したものです。個別の施設や契約については、施設および消費生活センター等にご確認ください。

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