エチルベンゼンの指針値が10分の1になりました|室内濃度指針値13物質の一覧

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結論:エチルベンゼンの指針値が3,800から370μg/㎥になり、対応の目標は令和8年3月末です

厚生労働省は令和7年1月17日、室内空気中化学物質の室内濃度指針値を改めて通知しました。今回の変更点は1物質です。

今般、最新の知見に基づいてエチルベンゼンの有害性評価を実施し、エチルベンゼンの室内濃度指針値を3,800μg/㎥から370μg/㎥に改定した

10分の1以下です。あわせて、対応の目標時期も示されています。

令和8年3月末を目標に、エチルベンゼンの新室内濃度指針値に対応するための取組を進めていただくよう、関係者各位のご協力をお願いするものである。

1. 指針値の一覧(13物質+TVOC)

化学物質名 室内濃度指針値 毒性指標 設定日/改定日
ホルムアルデヒド 100μg/m3(0.08ppm) ヒト吸入暴露における鼻咽頭粘膜への刺激 設定 平成9年6月13日
アセトアルデヒド 48μg/m3(0.03ppm) ラットの経気道暴露における鼻咽頭嗅覚上皮への影響 設定 平成14年1月22日
トルエン 260μg/m3(0.07ppm) ヒト吸入暴露における神経行動機能及び生殖発生への影響 設定 平成12年6月26日
キシレン 200μg/m3(0.05ppm) ヒトにおける長期間職業暴露による中枢神経系への影響 設定 平成12年6月26日/改定 平成31年1月17日
エチルベンゼン 370μg/m3(0.085ppm) ラット吸入暴露における聴覚への影響 設定 平成12年12月15日/改定 令和7年1月17日
スチレン 220μg/m3(0.05ppm) ラット吸入暴露における脳や肝臓への影響 設定 平成12年12月15日
パラジクロロベンゼン 240μg/m3(0.04ppm) ビーグル犬経口暴露における肝臓及び腎臓等への影響 設定 平成12年6月26日
テトラデカン 330μg/m3(0.04ppm) C8-C16混合物のラット経口暴露における肝臓への影響 設定 平成13年7月5日
クロルピリホス 1μg/m3(0.07ppb)
ただし小児の場合は0.1μg/m3(0.007ppb)
母ラット経口暴露における新生児の神経発達への影響及び新生児脳への形態学的影響 設定 平成12年12月15日
フェノブカルブ 33μg/m3(3.8ppb) ラットの経口暴露におけるコリンエステラーゼ活性などへの影響 設定 平成14年1月22日
ダイアジノン 0.29μg/m3(0.02ppb) ラット吸入暴露における血漿及び赤血球コリンエステラーゼ活性への影響 設定 平成13年7月5日
フタル酸ジ-n-ブチル 17μg/m3(1.5ppb) ラットの生殖・発生毒性についての影響 設定 平成12年12月15日/改定 平成31年1月17日
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル 100μg/m3(6.3ppb) ラットの雄生殖器系への影響 設定 平成13年7月5日/改定 平成31年1月17日
総揮発性有機化合物量(TVOC) 暫定目標値 400μg/m3 国内の室内VOC実態調査の結果から、合理的に達成可能な限り低い範囲で決定 設定 平成12年12月15日

単位の換算について、通知の注1は「両単位の換算は、25℃の場合による」としています。

2. 数字の幅がとても大きいことに意味があります

いちばん高いホルムアルデヒドの100μg/m3と、いちばん低いダイアジノンの0.29μg/m3では、約340倍の差があります。物質ごとに毒性指標が違うので、値の大小だけで危険度を比べることはできません。

クロルピリホスだけは小児に別の値が設定されています。一般が1μg/m3、小児が0.1μg/m3で10倍の差です。毒性指標が新生児の神経発達と新生児脳への形態学的影響であることと対応しています。

3. 指針値は規制値ではありません

通知は指針値の位置づけを明記しています。

室内濃度指針値は公衆衛生の観点から、化学物質の不必要な暴露を低減させ、それらが健康影響の危惧を起こすことなく安全かつ適正に使用されるようにすることを目的に、関係者がシックハウス対策に取り組むにあたって参考にしていただきたい値として策定しているものである。

「参考にしていただきたい値」という書き方です。超えたら違法という性質のものではありません。

4. ホルムアルデヒドだけ考え方が違います

表の毒性指標を見ると、ホルムアルデヒドは「ヒト吸入暴露における鼻咽頭粘膜への刺激」です。刺激は短期間の暴露で生じるものです。他の物質は長期間の暴露で生じる影響を指標にしています。

つまりホルムアルデヒドの100μg/m3は今その場で刺激が出るかどうかの線であり、他の12物質は長く吸い続けたときの影響の線です。同じ表に並んでいても意味が違います。

5. TVOCは性質が異なります

TVOCは個別物質ではなく揮発性有機化合物の総量です。毒性指標の欄も「国内の室内VOC実態調査の結果から、合理的に達成可能な限り低い範囲で決定」となっています。健康影響から逆算した値ではなく、実態から達成可能な水準として置かれた暫定目標値です。

6. この通知までの経緯

令和7年1月17日の通知(医薬発0117第1号)は、それまでの複数の通知を整理したものです。通知が挙げている過去の通知は次のとおりです。

  • 平成12年6月30日 生衛発第1093号(厚生省生活衛生局長)
  • 平成12年12月22日 生衛発第1852号(同)
  • 平成13年7月25日 医薬発第828号(厚生労働省医薬局長)
  • 平成14年2月7日 医薬発第0207002号(同)
  • 平成31年1月17日 薬生発0117第1号(厚生労働省医薬・生活衛生局長)

今回の通知は「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 中間報告書-第24回〜第28回までのまとめ」が令和7年1月17日付けで取りまとめられたことを踏まえたものです。

実務としてやること

  1. 新築・改装の予定があるなら、施工業者に室内濃度指針値への対応を確認する。エチルベンゼンについては令和8年3月末が目標時期です。
  2. 入居前・改装後は換気を十分にとる。指針値は換気を前提にした値ではありませんが、濃度を下げる手段としては換気が基本です。
  3. 小さな子どもがいる家庭では、クロルピリホスに小児向けの別の値(0.1μg/m3)が設定されていることを念頭に置く。
  4. 体調不良が続く場合は、指針値の数字を自分で判断材料にせず、医師に相談する。
  5. 測定を検討する場合、標準的測定方法も同じ通知で示されています。測定業者に方法を確認してください。

よくある質問

指針値を超えたらどうなりますか

通知は指針値を「参考にしていただきたい値」と位置づけています。罰則や措置命令を定めたものではありません。ただし建築物衛生法など別の法令が適用される建物では、その法令の基準が別にあります。

エチルベンゼンはどこから出るものですか

通知はエチルベンゼンの発生源については触れておらず、有害性評価の詳細を別添に示すとしています。発生源についてはこの通知からは確認できませんでした。

なぜ10分の1以下になったのですか

通知は「最新の知見に基づいてエチルベンゼンの有害性評価を実施し」たことを理由としています。毒性指標は「ラット吸入暴露における聴覚への影響」です。評価の詳細は通知の別添に示されています。

13物質以外は安全ですか

指針値が設定されているのが13物質とTVOCです。設定されていない物質について安全性を示したものではありません。

参照した一次情報

  • 厚生労働省医薬局長「室内空気中化学物質の室内濃度指針値及び標準的測定方法について」(医薬発0117第1号、令和7年1月17日) mhlw.go.jp(PDF)
    2026年9月27日確認。エチルベンゼンの3,800→370μg/㎥への改定と令和8年3月末という目標、13物質とTVOCの指針値・毒性指標・設定日/改定日、クロルピリホスの小児0.1μg/m3、TVOC暫定目標値400μg/m3、指針値の位置づけ、25℃での単位換算、過去の通知の一覧、検討会中間報告書に関する記述はこの通知に基づきます。
  • 厚生労働省「化学物質、シックハウス」 mhlw.go.jp
    2026年9月27日確認。シックハウス対策の関連資料が掲載されているページです。

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この記事は公開されている通知の記述を整理したものです。体調に不安がある場合は医師にご相談ください。建物ごとの測定や対策については施工業者または専門の測定機関にご確認ください。

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