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結論:令和8年1月1日から、下請法は「取適法」になりました。手形払いは支払遅延です
「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」(令和7年法律第41号)が令和7年5月16日に成立、同月23日に公布され、令和8年1月1日に施行されました。
これにより、下請法の正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変わりました。略称は中小受託取引適正化法、通称は取適法です。同時に「下請中小企業振興法」は「受託中小企業振興法」になりました。
名前が変わっただけではありません。用語も、対象も、禁止行為も変わっています。
| 旧(下請法) | 新(取適法) |
|---|---|
| 親事業者 | 委託事業者 |
| 下請事業者 | 中小受託事業者 |
| 下請代金 | 製造委託等代金 |
1. 主な改正点は4つです
公正取引委員会の運用基準は、令和7年改正法による変更を次のようにまとめています。
同法における下請事業者その他の用語が中小受託事業者等に改められるとともに、特定運送委託や従業員基準の追加、協議に応じない一方的な代金決定や手形による代金支払の禁止等が行われることとなる。
| 改正点 | 内容 |
|---|---|
| 用語の変更 | 親事業者→委託事業者、下請事業者→中小受託事業者 など |
| 特定運送委託の追加 | 販売・製造・修理・作成の目的物の、取引の相手方に対する運送の委託が対象に加わった |
| 従業員基準の追加 | 資本金基準に加えて、常時使用する従業員の数でも対象が決まる |
| 協議に応じない一方的な代金決定の禁止 | 新しい禁止行為(法第5条第2項第4号) |
| 手形による代金支払の禁止 | 手形の交付は支払遅延に該当する |
2. 従業員基準:300人/100人
これまでの下請法は資本金の額だけで対象が決まっていました。資本金1,000万円以下の会社は、どれだけ規模が大きくても対象外だったわけです。取適法では、常時使用する従業員の数という基準が加わりました。
| 取引の類型 | 委託事業者 | 中小受託事業者 |
|---|---|---|
| 製造委託・修理委託・特定運送委託、および政令で定める情報成果物作成委託・役務提供委託 | 常時使用する従業員の数が300人を超える法人 | 常時使用する従業員の数が300人以下の個人または法人 |
| 上記以外の情報成果物作成委託・役務提供委託 | 常時使用する従業員の数が100人を超える法人 | 常時使用する従業員の数が100人以下の個人または法人 |
なお、資本金基準はこれまでどおり残っています(製造委託等は3億円超と3億円以下、および1,000万円超3億円以下と1,000万円以下。情報成果物作成委託・役務提供委託は5,000万円超と5,000万円以下、および1,000万円超5,000万円以下と1,000万円以下)。
両者の関係について、運用基準はこう整理しています。
規模に係る要件の適用は委託取引ごとに判断するが、従業員基準は資本金基準が適用されない場合に適用する。
面白いのは、2事業者が相互に委託取引を行っている場合です。資本金基準で委託事業者に該当する者が従業員基準では中小受託事業者に、資本金基準で中小受託事業者に該当する者が従業員基準では委託事業者に、それぞれ該当することがある、と明記されています。
3. 「常時使用する従業員」の数え方
ここは実務で必ず聞かれる部分です。運用基準の定義はこうです。
- 労働基準法第9条に規定する労働者のうち、日々雇い入れられる者(1か月を超えて引き続き使用される者を除く)以外のもの
- 数は、その事業者の賃金台帳の調製対象となる労働者の数によって算定する
公正取引委員会のQ&Aでは、パートタイマーやアルバイト、グループ会社の従業員、船員の扱いについても問いが立てられています。実務で判断に迷う場合は、そちらを確認してください。
また、Q&Aには「製造委託等をする事業者には、取引の相手方の常時使用する従業員の数を確認すべき義務はあるか」「取引の相手方が事実と異なる回答を行ったため適用がないものと誤認した場合、措置の対象になるか」といった問いも立てられています。確認の方法を含めて、発注側の実務が変わる改正です。
4. 手形は「支払遅延」になります
これが中小企業にとっていちばん影響の大きい変更かもしれません。運用基準は、支払遅延(法第5条第1項第2号)の説明でこう書いています。
代金の支払について、「手形を交付すること」並びに「金銭及び手形以外の支払手段であつて当該製造委託等代金の支払期日までに当該製造委託等代金の額に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるものを使用すること」は、支払遅延に該当する。
そして、「金銭及び手形以外の支払手段」には次が該当するとされています。
- 一括決済方式(債権譲渡担保方式、ファクタリング方式、併存的債務引受方式)
- 電子記録債権
運用基準は違反行為事例も挙げています。
| 事例 | 内容 |
|---|---|
| 手形の交付による支払遅延 | 委託事業者は、中小受託事業者に対して、手形を交付することによって代金を支払っていた |
| 手形払から期日現金払に変更することによる支払遅延 | 手形払に係る経費の削減等を図るため、従来の手形払の満期相当日に現金で支払う方法に変更したことから、役務の提供を受けた日から60日を超えて代金を支払っていた |
2つ目が重要です。手形をやめても、支払日を手形の満期日と同じにしたのでは、60日ルールに引っかかります。
支払期日は「給付を受領した日(役務提供委託・特定運送委託の場合は役務の提供を受けた日)から起算して、60日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において」定めなければなりません(法第3条第1項)。起算日は給付を受領した日であり、検査や最終ユーザーへの提供を基準にする制度を採っている場合は、その期間を見込んだ支払制度にする必要があります。
5. 新しい禁止行為:協議に応じない一方的な代金決定
法第5条第2項第4号として新設されました。定義はこうです。
中小受託事業者の給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、中小受託事業者が製造委託等代金の額に関する協議を求めたにもかかわらず、当該協議に応じず、又は当該協議において中小受託事業者の求めた事項について必要な説明若しくは情報の提供をせず、一方的に製造委託等代金の額を決定すること
「費用の変動その他の事情」には、次が含まれるとされています。
- 労務費、原材料価格、エネルギーコスト等の高騰による費用の変動
- 従来の納期の短縮、納入頻度の増加、発注数量の減少等による取引条件の変更
- 需給状況の変化
- 委託事業者から従前の代金の引下げを求められた場合
これらの場合、委託事業者は中小受託事業者の求めに応じ、協議を適切に行わなければなりません。
従来からある「買いたたき」の禁止(法第5条第1項第5号)でも、運用基準は次を問題としています。
労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと。
「据え置いた」こと自体ではなく、「協議せずに据え置いた」ことが問題になる——これが今の運用の軸です。
6. 禁止行為の一覧
| 条項 | 禁止行為 |
|---|---|
| 第5条第1項第1号 | 受領拒否 |
| 第5条第1項第2号 | 支払遅延(手形の交付等を含む) |
| 第5条第1項第3号 | 代金の減額 |
| 第5条第1項第4号 | 返品 |
| 第5条第1項第5号 | 買いたたき |
| 第5条第1項第6号 | 購入・利用強制 |
| 第5条第2項第2号 | 不当な経済上の利益の提供要請 |
| 第5条第2項第3号 | 不当な給付内容の変更および不当なやり直し |
| 第5条第2項第4号 | 協議に応じない一方的な代金決定 |
7. 見落としやすい禁止行為
運用基準が挙げている具体例のうち、業種を問わず起きやすいものです。
型等の保管費用を払わずに保管させること。部品等の製造委託に関し、発注を長期間行わない等の事情があるにもかかわらず、金型・木型・治具・検具・製造設備等の保管費用(自社倉庫の使用料相当額、外部倉庫の使用料、倉庫等への運送費、メンテナンス費用等)を支払わず保管させることは、不当な経済上の利益の提供要請に該当します。
知的財産権を無償で譲渡・許諾させること。情報成果物等の作成に関し、中小受託事業者の知的財産権が発生する場合に、委託した情報成果物等に加えて、無償で、作成の目的たる使用の範囲を超えて当該知的財産権を譲渡・許諾させることも該当します。
運送以外の役務を無償でさせること。運送に係る役務提供委託・特定運送委託をした委託事業者が、運送の役務に加えて、無償で荷積み・荷下ろし・倉庫内作業等を提供させることも該当します。
従業員の派遣要請。運用基準には、発注とは無関係の事務を行わせた事例、店舗の営業の手伝いのために従業員を派遣させた事例、事業所構内での事故防止のためとして荷役作業や車両移動時の立会いのために従業員を派遣させた事例が挙げられています。
支払期日の管理をどうするか
取適法の実務は、突き詰めると「いつ受領したか」と「いつ払ったか」の記録に行き着きます。受領日から60日以内という起算点が法定されている以上、受領日が記録に残っていないと、そもそも遵守しているかを説明できません。
請求書の受領と支払予定日を1か所で管理できる会計・請求サービスを使っておくと、受領日と支払日の対応が自動的に残ります。手形をやめた結果、支払サイトの見直しが必要になる場合にも、現状のサイトを把握するところから始められます。
料金プラン、対応する機能、無料で使える範囲は変更されることがあります。申込み前に提供元の表示をご確認ください(当サイトでは2026年9月21日時点の案件情報に基づいて掲載しています)。なお、特定のサービスが取適法への対応を保証するものではありません。
実務としてやること
発注する側
- 自社が資本金基準・従業員基準のどちらで委託事業者に当たるかを、取引類型ごとに確認する
- 取引先の常時使用する従業員の数を確認する方法を決める
- 手形払いをしている場合、支払方法を見直す。期日現金払に変えるだけでは60日ルールに引っかかることがある
- 一括決済方式・電子記録債権を使っている場合も、同じ問題が生じないか確認する
- 価格交渉の求めがあったら、協議の日時・内容・提示した情報を記録に残す
- コスト上昇局面で価格を据え置く場合、明示的に協議した記録を残す
- 型・金型の保管を依頼している取引先に、保管費用を支払っているか確認する
受注する側
- 自社が中小受託事業者に当たるかを、取引類型ごとに確認する
- 価格改定を求めるときは、書面またはメールで、根拠とともに残す
- 協議に応じてもらえない場合、取適法に関する申告・情報提供等窓口がある
FAQ
建設工事は対象ですか
役務提供委託の定義から、建設業を営む者が業として請け負う建設工事の全部または一部を他の建設業を営む者に請け負わせることは除かれています。建設工事については建設業法が適用されます。
親子会社間の取引も対象ですか
公正取引委員会のQ&Aに「親子会社間や兄弟会社の取引にも、本法が適用されるか」という問いが立てられています。詳細はそちらをご確認ください。
弁護士や公認会計士との契約も対象ですか
Q&Aに「一般に、企業と弁護士、公認会計士、産業医との契約も、本法の対象となるか」という問いが立てられています。詳細はそちらをご確認ください。
フリーランスに発注する場合はどうなりますか
フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、従業員を使用しない個人等への発注を対象とする別の法律です。取適法とは要件が異なり、両方がかかる場合もあります。中小企業庁は「取適法およびフリーランス法に基づく取組」として、両方を扱っています。
60日は営業日ですか、暦日ですか
法第3条第1項は「給付を受領した日から起算して、60日の期間内において」と規定しています。営業日と限定する文言は、本記事で参照した条文および運用基準では確認していません。
参照した一次情報
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和31年法律第120号) e-gov.go.jp
2026年9月21日確認。第2条の定義(製造委託・特定運送委託・委託事業者・中小受託事業者)、資本金基準と従業員基準(300人・100人)、第3条の支払期日、第5条の禁止行為はこの法令に基づきます。 - 公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」 jftc.go.jp
2026年9月21日確認。令和7年改正の内容、規模に係る要件の適用順序、「常時使用する従業員」の定義と賃金台帳による算定、手形の交付・一括決済方式・電子記録債権が支払遅延に該当する旨、違反行為事例、買いたたきにおける協議の位置づけ、協議に応じない一方的な代金決定の定義と「費用の変動その他の事情」の範囲、型等の保管費用・知的財産権の無償譲渡・運送以外の役務・従業員の派遣要請に関する記述はこの資料に基づきます。 - 公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」 jftc.go.jp
2026年9月21日確認。適用範囲、従業員数の確認、親子会社間の取引、弁護士・公認会計士等との契約についての問いが立てられている旨はこのページに基づきます。 - 公正取引委員会「取適法」 jftc.go.jp
2026年9月21日確認。法律名の変更と施行期日(令和8年1月1日)に関する記述はこのページに基づきます。 - 中小企業庁「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)の概要・取組」 chusho.meti.go.jp
2026年9月21日確認。令和7年法律第41号の成立・公布・施行の日付、下請中小企業振興法が受託中小企業振興法となった旨に関する記述はこのページに基づきます。
いずれも2026年9月21日に確認しました。広告案件の条件は2026年9月21日時点の案件情報に基づきます。料金・提供条件は変更されることがあります。
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この記事は、公表されている一次情報をもとに整理したものです。個別の取引が取適法の対象となるかについては、公正取引委員会・中小企業庁または専門家にご確認ください。


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