「自家製パン」で市販品は問題、「鮮魚」で解凍品は問題なし|メニュー表示の線引き

広告と表示のルール

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結論:「自家製パン」で市販品を出すのは問題になります。「鮮魚」で解凍品は問題になりません

消費者庁の「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」(平成26年3月28日、平成28年4月1日一部改定)は、Q&A形式で具体例を並べた資料です。似た表現でも結論が分かれます。

表示 実際 結論
「自家製パン」 市販品のパンを提供 問題となる
「手打ち麺」 機械打ちで手作業は加わっていない 問題となる
「鮮魚のムニエル」(新鮮さを特に強調していない) 解凍した魚を使用 問題とならない
「駿河湾産の魚」を使用している旨 駿河湾産以外の魚も使用 問題となる
「ビーフステーキ」「ステーキ」 牛脂注入加工肉を使用 問題となる
消費者庁「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」のQ&Aより

1. なぜ「鮮魚」は問題にならないのか

消費者庁の説明はこうです。

「鮮魚」との表示から一般消費者が抱く認識・期待は様々であると考えられますが、一般的には、単に「鮮魚」との表示から、一般消費者はその飲食店において提供される料理において使用される魚が新鮮なものであると認識するものと考えられ(る)

「新鮮な魚」であることと「解凍していない魚」であることは、一般消費者の受け取り方として必ずしも一致しない、という整理です。ただし、これは新鮮さを特に強調した表示をしていない場合の話です。

一方「自家製パン」は違います。

「自家製パン」との表示から、一般消費者は、一般的には、その店舗で一から丁寧に作り上げたパンが提供されていると認識するものと考えられます。

その表示から一般消費者が何を認識するか——ここが判断の軸です。

2. 「手打ち」には定義があります

「手打ち麺」については、「生めん類の表示に関する公正競争規約」第4条第1項第1号に定義があると注記されています。

製めんに際し、原料に加水して麩質(グルテン)が形成するように混練し、熟成させた後、延棒で圧延し、包丁でめん線状に裁断すること及び熟成させた後、手作業によりめん線状に延ばし一定の長さに切断することであって、その工程をすべて手作業により行うことをいう。ただし、混練工程のみ機械で行うことができる。

混練だけは機械でよいが、それ以外の工程はすべて手作業、という定義です。

3. 産地を書くなら、全部その産地でなければなりません

駿河湾産の例の説明です。

駿河湾産の魚を使用している旨の表示から、一般消費者は、駿河湾で水揚げされた魚のみを使用した料理が提供されると認識するものと考えられます。

「駿河湾産も使っている」ではなく「駿河湾産のみ」と受け取られる、ということです。混ぜて使うなら、産地を単独で書くことはできません。

参考違反事例として、公正取引委員会が平成20年12月16日に、「北海道産ボタン海老のマリネ 紫蘇とジンジャーの香り」と記載したが実際に用いられたボタンエビはすべてカナダ産だったとして、飲食店を営む事業者に排除命令を行った事例が挙げられています。

4. 牛脂注入加工肉は「ステーキ」と書けません

「ビーフステーキ」「ステーキ」と表示した場合、一般消費者は牛脂注入等の加工をしていない牛の生肉の切り身を焼いた料理であると認識する、というのが消費者庁の整理です。

違反事例も2つ挙げられています。

  • 平成23年3月4日:料理の写真とともに「霜降サーロインステーキ」等と記載したが、実際に用いた牛肉は牛脂を注入する加工を行ったものだった(措置命令)
  • 平成25年12月19日:「牛ロース肉のステーキ」等と記載したが、実際には生鮮食品に該当しない牛脂その他の添加物を注入した加工食肉製品を使用していた(措置命令)

「有機野菜のプチサラダと前菜二種盛合せ」と記載したが、実際には有機農産物の定義に該当しない野菜を使用していた事例(平成25年12月19日措置命令)も掲載されています。

5. 口頭での説明も「表示」です

ここは見落としやすいところです。景品表示法の対象となる「表示」には、次のものが含まれます。

媒体
商品、容器又は包装による広告その他の表示、およびこれらに添付したものによる表示
見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似する物による表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等を含む)、および口頭による広告その他の表示(電話によるものを含む)
ポスター、看板(プラカード、建物や電車・自動車等に記載されたものを含む)、ネオン・サイン、アドバルーン、陳列物又は実演による広告
新聞紙、雑誌その他の出版物、放送、映写、演劇又は電光による広告
情報処理の用に供する機器による広告その他の表示(インターネット、パソコン通信等を含む)
景品表示法第2条第4項に規定する「表示」(同資料より)

消費者庁は、これを踏まえてこう書いています。

したがって、店内・店頭のメニューや料理名の表示、陳列物、説明も表示に該当し、景品表示法の対象となる。

スタッフの口頭説明も表示です。メニューを直しても、接客で「これは自家製です」と言っていれば同じ問題が生じます。

6. 判断は「表示全体から受ける印象」で行われます

資料の冒頭に前提が書かれています。

実際の表示が景品表示法に違反するかどうかについては、表示上の特定の文言等のみからだけでなく、メニュー・料理等の実際の表示全体から一般消費者が受ける印象と実際との差を個別に検討することとなる。

写真、料理名、説明文、価格——これらを合わせて見たときにどう受け取られるかで判断されます。

7. 対象は飲食店だけではありません

資料は、この問題が起きた経緯についても触れています。ホテルや百貨店、レストラン等が提供するメニュー・料理等の食品表示について、実際に使われていた食材と異なる表示が行われていた事例が相次ぎ、表示に対する消費者の信頼が著しく損なわれる事態が生じた——これがこの資料が作られた理由です。

景品表示法は対象とする商品・役務の範囲を限定していないため、ホテルや百貨店、レストラン等が提供するメニュー・料理等の表示はすべて同法の対象です。

実務としてやること

  • メニューの表現を一つずつ見て、「この言葉から客は何を想像するか」を書き出す
  • 「自家製」「手作り」「手打ち」は、工程が実際にそうなっているか確認する
  • 産地を書くなら、その産地のものだけを使う。混ぜるなら産地を単独で書かない
  • 加工肉を使うなら、その旨が分かる料理名にする
  • 「有機」「オーガニック」は、定義に該当するか確認する
  • スタッフの口頭説明もメニューと同じ内容になるよう統一する
  • 仕入れが変わったら、メニューの表現も見直す

FAQ

「手作り」はどこまでなら書けますか

本記事で参照した資料には「手打ち麺」の定義(生めん類の表示に関する公正競争規約)が注記されていますが、「手作り」一般の基準は扱っていません。判断は表示全体から一般消費者が受ける印象と実際との差によることになります。

仕入れ状況で産地が変わる場合はどうすればよいですか

資料は、駿河湾産以外の魚も使用しているにもかかわらず駿河湾産の魚を使用している旨を表示することは問題となる、としています。産地が変動するなら、産地を特定した表示をしないという選択になります。

黒板に書いた日替わりメニューも対象ですか

対象です。「ポスター、看板」による表示や「店内・店頭のメニューや料理名の表示」が明示的に含まれています。

間違いに気づいたらどうすればよいですか

本記事で参照した資料は、表示の考え方を示すものです。実際に誤った表示をしていた場合の対応については、消費者庁または専門家にご相談ください。

この資料はいつのものですか

平成26年3月28日に消費者庁が公表し、平成26年12月1日および平成28年4月1日に一部改定されています。

参照した一次情報

  • 消費者庁「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」(平成26年3月28日、平成28年4月1日一部改定) caa.go.jp(PDF)
    2026年9月22日確認。「自家製パン」「手打ち麺」「鮮魚」「駿河湾産」「ビーフステーキ」に関するQ&Aと説明、手打ちの定義(生めん類の表示に関する公正競争規約)、景品表示法の対象となる表示の範囲(口頭によるものを含む)、店内・店頭のメニューや説明も表示に該当する旨、表示全体から一般消費者が受ける印象で判断する旨、掲載されている違反事例に関する記述はこの資料に基づきます。
  • 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第2条第4項、第5条 e-gov.go.jp
    2026年9月22日確認。条文の内容はこの法令に基づきます。

いずれも2026年9月22日に確認しました。資料中の違反事例は、公正取引委員会・消費者庁が過去に行った排除命令・措置命令として同資料に掲載されているものです。

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この記事は、公表されている一次情報をもとに整理したものです。個別の表示の適否については、消費者庁または専門家にご確認ください。

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