顔そりは理容、まつ毛エクステは美容|理容師法と美容師法の境目

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結論:法律の定義は「整える」か「美しくする」かで分かれています

理容と美容は、別々の法律で定められています。定義を並べると、違いがはっきりします。

理容(理容師法第1条の2) 美容(美容師法第2条)
条文 頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整えること パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること
法律 理容師法(昭和22年法律第234号) 美容師法(昭和32年法律第163号)
免許 理容師試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受ける 美容師試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受ける

条文に例示されている行為が違います。顔そりは理容の例示にあり、美容の例示にはありません。逆に、パーマネントウエーブ・結髪・化粧は美容の例示です。

1. ただし、相互に「差し支えない」とされている行為があります

厚生労働省が公表している理容師法・美容師法の概要には、次の記載があります。

厚生労働省の記載
理容:「染毛も理容行為に含まれる。なお、理容師がパーマネントウェーブを行うことは差し支えない。」
美容:「染毛やまつ毛エクステンションも美容行為に含まれる。なお、美容師がカッティングを行うことは差し支えない。」
厚生労働省健康・生活衛生局生活衛生課「理容師法の概要」「美容師法の概要」より

整理すると、こうなります。

  • 染毛は、理容行為にも美容行為にも含まれる
  • パーマは美容の例示だが、理容師が行うことは差し支えない
  • カットは理容の例示だが、美容師が行うことは差し支えない
  • まつ毛エクステンションは美容行為に含まれる(=美容師免許が必要)

つまり、カットとパーマと染毛については、相互乗り入れが認められています。一方、顔そりについては、美容師が行ってよいという記載が厚生労働省の該当ページには見当たりません。実務で行われている「化粧に付随する軽いうぶ毛そり」の扱いについては、本記事では一次情報を確認できませんでした。判断が必要な場合は、営業所を所管する保健所にご確認ください。

2. 「業」とは、有料・無料を問いません

厚生労働省の概要は、両方に同じ注記を置いています。

理容師の免許を持たないものは理容を業として行うことはできない。なお、業とは反復継続の意思をもって行うことで、有料・無料は問わない。

無料だから大丈夫、という理屈は通りません。反復継続の意思があれば「業」です。

条文上も、理容師法第6条は「理容師の免許を受けた者でなければ、理容を業としてはならない」、美容師法第6条は「美容師でなければ、美容を業としてはならない」と定めています。

3. 免許取得までの道のりは、ほぼ同じです

課程 期間(一般) 期間(修得者課程)
昼間課程 2年以上 1年以上
夜間課程 2年以上 1年以上
通信課程 3年以上 1年半以上
厚生労働省「理容師法の概要」「美容師法の概要」より。高等学校卒業後、都道府県知事の指定した養成施設で学科・実習を修了したうえで試験に合格し、申請により免許が与えられます。修得者課程は、すでに一方の免許を持つ者などが対象です。

美容師法第4条第4項は、通信課程について「昼間課程又は夜間課程を設ける美容師養成施設に限つて、設けることができる」と定めています。

4. 店舗のルールも、ほぼ同じ構造です

項目 理容所 美容所
店舗外での業務 原則禁止(理容師法第6条の2) 原則禁止(美容師法第7条)
例外 疾病等により来られない者に対して行う場合、婚礼等の儀式に参列する者に対してその儀式の直前に行う場合、その他都道府県(保健所設置市・特別区にあっては市・区)が条例で定める場合
開設・廃止 あらかじめ(廃止はすみやかに)都道府県知事等に届出
使用開始前 構造設備について検査を受け、確認を受けた後でなければ使用できない
管理者 理容師が常時複数いる場合、管理理容師を置く 美容師が常時複数いる場合、管理美容師を置く
管理者の要件 当該業歴3年以上で、都道府県知事が指定した講習会を修了した者
立入検査 環境衛生監視員が行う
閉鎖命令 衛生上必要な措置を怠った場合、都道府県知事等が出すことができる

美容師法第8条は、美容の業を行うときに講ずべき措置として、皮ふに接する布片および器具を清潔に保つこと、布片を客一人ごとに取り替え、器具を客一人ごとに消毒すること、その他都道府県が条例で定める衛生上必要な措置を挙げています。

5. 数で見る、理容と美容

衛生行政報告例をもとにした厚生労働省の記載では、令和6年3月末現在の状況は次のとおりです。

従業者数 前年比 施設数 前年度比
理容 19万9,467人 5,416人減少 11万297施設 1.9%減少
美容 57万9,768人 7,958人増加 27万4,070施設 1.5%増加
厚生労働省「理容業概要」「美容業概要」(令和6年3月末現在、衛生行政報告例より)

美容師は理容師の約2.9倍、美容所は理容所の約2.5倍です。そして、理容は減少、美容は増加という逆方向の動きをしています。理容所数については、昭和61年をピークに減少傾向が続いていると記載されています。

なお、新規免許取得者数について厚生労働省の該当ページに記載されているのは平成27年度中の数値(理容1,611人、美容19,005人)で、いずれも前年度より増加、とされています。最新年度の数値は本記事では確認していません。

6. 経営面で挙げられている課題

厚生労働省の「理容業概要」「美容業概要」には、経営の動向についての記載もあります。

記載されている課題
理容業 新規参入が比較的容易で、同業他店とのサービスの差別化が図りにくく、人手によるサービス業で生産性向上が図りにくい。性別・年齢を問わず多様な求めに対応することは難しいため、立地条件や顧客層を考慮し、地域密着型/利便型/癒し型といった経営方針を明確にすることが重要
美容業 「店舗過剰」「低価格化」「客数の減少」が利益の減少の要因。特に客数の減少を経営上の問題の第1に挙げる経営者が多い。来店者のほとんどが近しい人からの口コミによることを考えると、日頃の店内活動が顧客獲得の重要なポイント

行政の資料としては踏み込んだ書き方をしています。共同化・協業化(地域情報の共有、DM等の顧客へのサービス情報の提供、研修会への参加、チェーンへの加盟)も、経営力強化の選択肢として挙げられています。

実務としてやること

  • 提供しようとしているメニューが理容行為か美容行為かを、条文の例示と厚生労働省の記載で確認する
  • まつ毛エクステンションを提供するなら、美容師免許が必要
  • 顔そりを提供するなら、理容師免許が必要。美容所で顔そりを行う場合の扱いは、所管の保健所に確認する
  • 理容所と美容所の両方を営もうとする場合、それぞれの届出と検査確認が必要かを保健所に確認する
  • 理容師・美容師が常時複数いる店舗では、管理理容師・管理美容師を置く(業歴3年以上+知事指定の講習会修了)
  • 出張で施術する場合、政令や条例で定める特別の事情に当たるかを確認する

FAQ

両方の免許を持つことはできますか

できます。厚生労働省の記載では、養成施設の「修得者課程」は昼間・夜間課程で1年、通信課程で1年半以上とされており、すでに一方の課程を修了している人向けの短縮課程が用意されています。

美容師がカットだけの店を開くことはできますか

厚生労働省は「美容師がカッティングを行うことは差し支えない」としています。ただし店舗は美容所として届出・検査確認を受けることになります。具体的な扱いは所管の保健所にご確認ください。

理容師がまつ毛エクステンションをできますか

厚生労働省は、まつ毛エクステンションを美容行為に含まれると明記しています。理容師が行えるという記載は、本記事で参照した資料では確認していません。

シャンプーだけなら免許はいりませんか

本記事で参照した資料に、シャンプーのみの行為についての記載はありません。補助業務の範囲については、美容所の衛生管理要領などで整理されています。別記事をご参照ください。

自宅でご近所の髪を無料で切るのはよいのですか

厚生労働省は「業とは反復継続の意思をもって行うことで、有料・無料は問わない」としています。無料であることは、免許不要の理由にはなりません。

出張カットはできますか

理容所・美容所以外での業務は原則禁止です。例外として、疾病等により来られない者に対して行う場合、婚礼等の儀式に参列する者に対してその儀式の直前に行う場合、その他都道府県(保健所設置市・特別区にあっては市・区)が条例で定める場合が挙げられています。条例の内容は自治体ごとに異なります。

参照した一次情報

  • 理容師法(昭和22年法律第234号) e-gov.go.jp
    2026年9月21日確認。第1条の2(理容の定義)、第6条(無免許営業の禁止)、第6条の2(理容所以外での営業の禁止)、第11条(届出)、第11条の2(検査確認)はこの法令に基づきます。
  • 美容師法(昭和32年法律第163号) e-gov.go.jp
    2026年9月21日確認。第2条(美容の定義)、第4条(美容師試験・養成施設)、第6条(無免許営業の禁止)、第7条(美容所以外の場所における営業の禁止)、第8条(講ずべき措置)、第11条(届出)、第12条(美容所の使用)はこの法令に基づきます。
  • 厚生労働省健康・生活衛生局生活衛生課「理容師法の概要」 mhlw.go.jp
    2026年9月21日確認。染毛が理容行為に含まれること、理容師がパーマネントウェーブを行うことは差し支えない旨、「業」の意味(反復継続の意思、有料・無料を問わない)、免許取得までの課程と期間、出張して行える場合、管理理容師の要件、環境衛生監視員、閉鎖命令に関する記述はこのページに基づきます。
  • 厚生労働省健康・生活衛生局生活衛生課「美容師法の概要」 mhlw.go.jp
    2026年9月21日確認。染毛とまつ毛エクステンションが美容行為に含まれること、美容師がカッティングを行うことは差し支えない旨、免許取得までの課程と期間、出張して行える場合、管理美容師の要件に関する記述はこのページに基づきます。
  • 厚生労働省「理容業概要」 mhlw.go.jp
    2026年9月21日確認。令和6年3月末現在の従業理容師数19万9,467人(前年より5,416人減少)、理容所数11万297施設(前年度比1.9%減)、昭和61年をピークとする減少傾向、経営の動向に関する記述はこのページに基づきます。新規免許取得者数(1,611人)は同ページに平成27年度中の数値として記載されているものです。
  • 厚生労働省「美容業概要」 mhlw.go.jp
    2026年9月21日確認。令和6年3月末現在の従業美容師数57万9,768人(前年より7,958人増加)、美容所数27万4,070施設(前年度比1.5%増)、経営の動向に関する記述はこのページに基づきます。新規免許取得者数(19,005人)は同ページに平成27年度中の数値として記載されているものです。

いずれも2026年9月21日に確認しました。従業者数・施設数は令和6年3月末現在として厚生労働省が公表しているものです。新規免許取得者数は、同ページに平成27年度中の数値として記載されているものです。

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この記事は、公表されている一次情報をもとに整理したものです。個別の施術や店舗の扱いについては、所管の保健所にご確認ください。

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