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結論:法律が定めているのは「推定」です。無効にならない、という話ではありません
電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号、電子署名法)第3条は、こう定めています。
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
法務省の説明では、これにより「本人による一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書等は、真正に成立したもの(本人の意思に基づき作成されたもの)と推定されます」となります。
押さえておくべき点が3つあります。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 「推定する」であって「みなす」ではない | 反対の証拠があれば覆り得る |
| 条件がある | 「これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る」 |
| 電子署名がなくても契約自体は成立し得る | この条文が定めているのは、文書の成立の真正についての推定であって、契約の有効性そのものではない |
1. 「電子署名」の定義は2つの要件です
第2条第1項は、電子署名を次の2つの要件をいずれも満たす措置と定義しています。
| # | 要件 |
|---|---|
| 一 | 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること |
| 二 | 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること |
2つ目が重要です。「誰が作ったか」だけでなく「あとから変えられていないか確認できること」が定義に入っています。画像として貼り付けた印影は、この2つ目を満たしません。
なお「電磁的記録」は、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものと定義されています。
2. 「認証業務」と「特定認証業務」
| 用語 | 定義(第2条) |
|---|---|
| 認証業務 | 自らが行う電子署名についてその業務を利用する者その他の者の求めに応じ、当該利用者が電子署名を行ったものであることを確認するために用いられる事項が当該利用者に係るものであることを証明する業務 |
| 特定認証業務 | 電子署名のうち、その方式に応じて本人だけが行うことができるものとして主務省令で定める基準に適合するものについて行われる認証業務 |
3. 認定制度は「できる」制度です
第4条第1項は、こう定めています。
特定認証業務を行おうとする者は、主務大臣の認定を受けることができる。
「受けることができる」——任意の制度です。認定を受けていない認証業務が違法というわけではありません。
法務省の説明では、認証業務のうち一定の基準を満たすものは内閣総理大臣及び法務大臣の認定を受けることができる制度が導入された、とされています。また、認定制度の導入にあたって、デジタル庁及び法務省は、認定の際に申請のあった認証業務に用いられる設備等を実地に調査する業務を行う指定調査機関を指定しています。
認定を受けようとする者は、主務省令で定めるところにより、次の事項を記載した申請書その他主務省令で定める書類を主務大臣に提出します。
- 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
- 申請に係る業務の用に供する設備の概要
- 申請に係る業務の実施の方法
主務大臣は、認定をしたときはその旨を公示しなければなりません。
4. 法律の構成
| 章 | 内容 | 条 |
|---|---|---|
| 第1章 | 総則 | 第1条・第2条 |
| 第2章 | 電磁的記録の真正な成立の推定 | 第3条 |
| 第3章 | 特定認証業務の認定等 | 第4条〜第16条 |
| 第4章 | 指定調査機関等 | 第17条〜第32条 |
| 第5章 | 雑則 | 第33条〜第40条 |
| 第6章 | 罰則 | 第41条〜第47条 |
推定について定めているのは第3条の1条だけで、残りの大半は認証業務の認定制度と調査機関に関する規定です。
5. この法律の目的
この法律は、電子署名に関し、電磁的記録の真正な成立の推定、特定認証業務に関する認定の制度その他必要な事項を定めることにより、電子署名の円滑な利用の確保による情報の電磁的方式による流通及び情報処理の促進を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
法務省は、この法律が平成13年(2001年)4月1日から施行され、「電子署名が手書きの署名や押印と同等に通用する法的基盤が整備されました」と説明しています。
6. 実務で確認すること
電子契約サービスを使うとき、法律の条文から逆算して確認すべきなのは次の点です。
| 確認 | 根拠 |
|---|---|
| 改変の有無を確認できる仕組みになっているか | 第2条第1項第2号 |
| 署名に必要な符号・物件を自社で適正に管理できているか | 第3条の括弧書き |
| 認定認証業務かどうか | 第4条(任意の認定制度) |
2つ目が実務上いちばん抜けやすい点です。「本人だけが行うことができることとなるもの」という条件は、IDとパスワードを共有していたり、担当者が退職後もアカウントが生きていたりすると崩れます。
なお、当サイトでは個別の電子契約サービスがこれらの要件をどう満たしているかは確認していません。また、立会人型(事業者署名型)の電子署名と第3条の推定の関係については、本記事では扱っていません。
実務としてやること
- 電子契約サービスを選ぶとき、改変検知の仕組みがあるかを確認する
- 署名に使うアカウントを個人ごとに分ける。共有しない
- 退職・異動のときにアカウントを止める手順を決めておく
- 認定認証業務かどうかを確認する(認定は任意なので、ないこと自体は違法ではない)
- 取引先との間で、どの方式を使うかを事前にすり合わせる
- 電子契約に切り替えても、文書の保存義務(電子帳簿保存法など)は別に生じることを確認する
FAQ
押印がなくても契約は有効ですか
電子署名法第3条が定めているのは、電磁的記録の成立の真正についての推定です。契約の成立や有効性そのものを定めた規定ではありません。個別の契約については専門家にご相談ください。
メールに署名欄を書くだけでも電子署名ですか
第2条第1項は、電子署名を「作成者を示すためのもの」かつ「改変が行われていないかどうかを確認することができるもの」の両方を満たす措置と定義しています。2つ目の要件を満たさないものは、この法律にいう電子署名には当たりません。
認定を受けていないサービスは使えませんか
第4条第1項は「認定を受けることができる」としており、任意の制度です。認定の有無が、そのサービスの利用可否を決めるものではありません。
公的な文書も対象ですか
第3条は「公務員が職務上作成したものを除く」としています。
主務大臣は誰ですか
法務省の説明では、認証業務のうち一定の基準を満たすものは内閣総理大臣及び法務大臣の認定を受けることができる、とされています。認定の申請の受付先として、デジタル庁と法務省民事局商事課が案内されています。
参照した一次情報
- 電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号) e-gov.go.jp
2026年9月22日確認。第1条(目的)、第2条(電子署名・認証業務・特定認証業務の定義)、第3条(電磁的記録の真正な成立の推定)、第4条(認定)および法律の章構成はこの法令に基づきます。 - 法務省「電子署名法の概要と認定制度について」 moj.go.jp
2026年9月22日確認。平成13年4月1日施行である旨、電子署名が手書きの署名や押印と同等に通用する法的基盤が整備された旨、内閣総理大臣及び法務大臣の認定を受けることができる制度、デジタル庁及び法務省が指定調査機関を指定した旨、認定の申請の受付先に関する記述はこのページに基づきます。
いずれも2026年9月22日に確認しました。立会人型(事業者署名型)の電子署名と第3条の推定の関係については、本記事では扱っていません。
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この記事は、公表されている一次情報をもとに整理したものです。個別の契約や電子契約サービスの選定については、専門家にご相談ください。


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